循環器内科
FFRctについて
AIの技術で体内に管を入れなくても狭心症の診断が可能に
当院では、新しい心臓の検査であるFFRctを北関東4県で2施設目、栃木県では初の導入をしました。
この検査は冠動脈が狭くなって心臓に十分な血液を供給できなくなる狭心症の疑いの方に対して行われます。本来は入院して血管に針を刺して心臓の血管まで管を通すことでやっと測定できた値を、痛みを伴わずにコンピュータによるシミュレーションで測定できる画期的な検査です。
従来は冠動脈CT検査で冠動脈に狭くなった部分(狭窄)が見つかった場合、その狭くなった部分(狭窄)が“心臓の働きにどの程度影響を与えているのか?” “症状の原因となっているのか?”を追加のカテーテル検査や心筋シンチグラフィーなどの別の検査を行っていました。
特に中程度狭窄(ボーダーライン)と呼ばれる血管が半分程度狭くなっている場合や複数の狭くなった部分(狭窄)がある場合は冠動脈CT検査の結果だけで判断することは難しく カテーテル検査や心筋シンチグラフィーなどの他の検査で調べる必要がありました。
しかしカテーテル検査は入院が必要で、手首や足の血管に管を入れ、心臓までカテーテル、と呼ばれる管を挿入する検査であり、痛みも伴います。
心筋シンチグラフィーなどの他の検査も、予約を取ったうえで再度来院していただく必要があります。
FFRct解析は非侵襲的検査(痛みを伴わない検査)であり、冠動脈CT検査の画像データをもとに最新のコンピュータ技術で解析を行い追加の検査は必要ありません。
そのためカテーテル検査のような痛みを伴う検査を行うことなく冠動脈の危険度を調べることができるようになりました。この検査では、それぞれの狭くなった部分(狭窄)が心臓の働きにどのように影響するかを患者様個別の冠動脈3Dモデルで解析結果を確認できます。図では左前下行枝と呼ばれる血管が赤で示されていますが、狭くなった部分で実際に血液の流れが滞り、治療が必要である、例えるなら「赤信号」であることを示しています。図に示された数値は本来であれば痛みを伴うカテーテル検査でしか測定できないFFRと呼ばれる値です。0.75-0.80以上であれば治療を要さない狭窄ですが、この図の結果では0.69と低下しており、血液の流れが低下して実際に心臓に悪い影響を与えていることを示しています。
この詳細な情報は、これまでは痛みを伴うカテーテル検査でしか得られなかったものですが、FFRct解析の導入により、症状の安定した患者さんに対して痛みを伴なわずに診断することが可能になりました。
この画期的なFFRct解析を導入するには基準が設けられており、この基準を満たしている施設のみが導入することが可能です。現段階では全国でも数少ない施設でのみ導入されています。栃木県では当院でのみFFRct解析を導入しております。