地域医療連携

生活困窮者支援事業「なでしこプラン」

済生会は、生活困窮者を医療で救済する「施薬救療」を目的に発足され、その創立の精神は、2000年度より法人全体で展開している生活困窮者を支援する事業「なでしこプラン」として、現在も受け継がれています。当院でも、地域の関係機関やNPO法人等と協働し、生活困窮者、障がい者、ホームレス、刑余者、在留外国人、虐待・DV被害者、子どもの貧困、地域との孤立、長期療養者の就労など生活困難者が抱える様々な問題に寄り添い、継続的に支援する中でソーシャルインクルージョンを推進しています。

当院が取り組む主な事業

生活に困窮する外国人等への支援
「外国人のための医療相談会」

2012年度より「生活困窮かつ言葉の障壁があり医療に結びつきにくい方々への医療支援」の必要性を感じ、普段は医療に繋がりにくい生活困窮者の外国人(在留資格を問わず)に母国語で無料の健康診断を提供することで、自身の健康管理に貢献し、疾病の予防や早期発見、そして治療に繋げることを目的に外国人のための医療相談会を開始しました。
当院の健診センターで健康診断を行い、外国人支援団体や弁護士と協働し、様々な相談に応じています。
また2016年度からは、済生会関東ブロックMSW研究会の新たな取り組みとして、支部(県)を越えた共同支援事業である同相談会を開始、関東ブロックのMSWが連携し相談支援する体制を構築しました。

 

刑余者等への支援
「更生保護施設入所者無料健診事業」

全国に先駆け2010年度から宇都宮保護観察所と連携し、県内の更生保護施設入所者の無料健診を行っています。また経済的理由で就労の際に必要な健康診断ができない刑余者に、無料で健康診断書を作成するなどの就労支援も行っております。
更生保護施設と連携し、入所者が病気になり、経済的理由から病院受診が困難な時には、無料低額診療での対応も行っています。
※上記功績が認められ、2018年、栃木県更生保護事業関係者顕彰式にて当院が民間協力者として、宇都宮保護観察所長より感謝状を受彰しました。


「薬物依存者施設入居者無料健診事業」

2012年度には薬物依存者施設入居者への無料健診事業も全国に先駆け開始しました。栃木県内には、ダルク(薬物依存者施設)が5か所あり、それぞれの施設の入居者を対象に無料健診事業を行っています。

 

性暴力被害者等への支援
「性暴力被害者支援センター とちエール」

2015年7月1日、栃木県の委託事業として性暴力被害者支援センター とちエールを開設しました。性犯罪・性暴力被害にあわれた方を総合的に支援するために、相談支援をはじめ、医療的支援、捜査関連支援、心理的支援、法的支援、生活的支援などを行っています。

 

仕事や生活に関する支援
「両立支援・就労支援」

2017年度より、がんや難病の患者さん等が治療を続けながら、離職せずに安心して働くことができるよう「両立支援」事業を開始しました。当院の相談窓口に出張相談窓口を設置し、ハローワーク宇都宮、宇都宮社会福祉協議会、社会保険労務士と当院のMSWが協同し相談業務を対応しています。この両立支援相談窓口と生活困窮者自立相談支援相談窓口や社会保険労務士の総合相談支援は日本で初めての試みです。

 

子どもの未来への支援
「子どもSUNSUNプロジェクト」

2017年、子どもの貧困について一緒に知り、貧困撃退方法を一緒に考え、一緒に行動する本気の大人を増やすことを目的に子どもSUNSUNプロジェクトが立ち上げられ、地域に居場所・無料学習支援・子ども食堂・フードバンク等を作り貧困の連鎖を食い止める活動が始まりました。当院もこの活動に賛同し、当プロジェクトの世話人も務めています。地域への広報活動として、地元ラジオへの出演、子どもの貧困に関するシンポジウムの開催、サンタでラン等地域のイベントへの参加などをしています。

 

母親等への支援
「産後ケア事業」

2017年度より宇都宮市から委託され、産後うつの疑いがあり、支援の対象となる母親に対し、個々の状況に応じた心身のケアや育児サポートを行う宿泊型の産後ケア事業を実施しています。

 

地域の高齢者、障がい者等への支援
「宇都宮市医療・介護連携支援ステーション」

医療と介護の連携をサポートするために、2018年度に宇都宮市より委託を受け活動しています。担当する市内中央ブロックエリアの地域包括支援センター、病院、診療所、居宅介護支援事業所、各種介護サービス事業所等に、医療・介護連携の際に必要となる情報の提供や、地域の医療・介護従事者の顔の見える関係づくりに向けた研修等の開催を行っています。

 

「認知症疾患医療センター」

2017年度より、栃木県において認知症疾患対策の充実を図るため、当院は認知症疾患医療センターの指定を受けました。地域における認知症の専門医療機関として、認知症疾患の鑑別診断、地域の医療機関の紹介、医療と介護の連携強化を図ることにより、その方に合った治療を行い、尊厳を保ちながら、その人らしく生きることが出来るように、ご本人ならびにご家族の支援を行っています。
全国すべてのまちが、認知症になっても安心して暮らせる街を目指し、地域の中で少しずつタスキをつなぎ、ゴールを目指し、認知症の人や家族、支援者、一般の人が一緒に走る「RUN伴」等、地域のイベントにも積極的に参加しています。

 

自然災害後の生活を支える
「炊き出しボランティア」

洪水や土砂災害、地震などの自然災害により生活継続が困難になった人たちの救援と復興活動、生活支援を行うことを目的に活動しています。
2019年10月に発生した台風19号の際には、浸水被害の被害者を支援するため、NPO法人「とちぎボランティアネットワーク」や「とちぎYMCA」等と協働して炊き出し支援場所の設置や周知、当院の炊き出し支援活動なども行いました。

 

コロナ禍の生活困窮者を支える
「つながりサポート女性支援事業(つなサポ相談室)」

新型コロナウイルス感染症などの影響で、不安や困難を抱える女性が孤立化・潜在化する中、支援が十分に行き届いていない女性に対してきめ細かな支援を強化するため、2021年度、宇都宮市から委託され「宇都宮市つながりサポート女性支援 事業」を開始しました。生理用品の無料配布をきっかけに、相談支援の輪につなげられるよう、院内の常設窓口の設置や、地域に出向いた出張相談会(臨時相談会)を定期的に開催しています。また、身近な生活圏域で相談や生理用品を無料提供 できるように「つなサポ相談室」の連携機関を構築しました。地域内の病院や診療所、NPO法人や子ども食堂、地域包括支援センター等、多くの職域に拡げ、重層的でかつ全世代型の相談支援体制が構築でき、地域力の向上にも繋がりました。

 

上記活動を通して、今後も済生会の生活困窮者支援事業として、なでしこプランの活動を地域に広く周知していきます。