産婦人科

出生前検査について

クアトロテスト

クアトロテストとは胎児がダウン症、18トリソミー、開放性神経管奇形(脊髄髄膜瘤など)に罹患している確率を母体採血データから算出する検査です。クアトロテストのクアトロとはラテン語の“4”を意味する言葉で、母体血液中の4種類の物資(AFP、hCG、uE3、InhibinA)の各濃度から、胎児に上記疾患があるかどうかを推測します。結果はそれぞれの疾患の一般的発生率と比べて、発生確率が高いか低いかによって陽性、陰性の判断をします。あくまで発生確率を算出するだけで、確定診断ではありません。ですから、陰性と結果が出ても実際は異常である場合もあるし、陽性と判断されても異常がないこともあり、その際は精密検査が必要となってきます。結果が出るまでに10日間ほどかかります。検査の時期は、その後の確定検査期間を考慮すると妊娠15週から17週までに行うのが良いでしょう。費用は自費で25,000円です。採血だけで済み、費用も比較的安いことが利点ですが、あくまでスクリーニング検査であり、確定検査ではないことを認識しておく必要があります。そのため最近では母体採血による出生前検査ではより精度の高い、次のNIPT検査が主流となりつつあります。

イメージ図 脊髄髄膜瘤 
NIPT(新型出生前検査)

NIPT(ニプトあるいはエヌ・アイ・ピー・ティー)とはnon-invasive prenatal genetic testingの略で直訳すれば非侵襲性出生前遺伝子検査となります。胎児染色体中の微量のDNAは胎盤を通過して母体の血中に混入します。このため、採取した母体血液から胎児のDNAだけを抽出することで遺伝子検査が可能となるわけです。理論的にはさまざまな胎児疾患の診断が可能ですが、現実的にはダウン症、13トリソミー、18トリソミーといった染色体異常だけが対象となります。上記のクアトロテストの感度は83%程度とされており、NIPTのそれが99%であるため、陽性と出た場合の信頼性はかなり高いと言えます。ただし、100%の確定診断ではないため、陽性の場合はさらなる羊水検査を行う必要があります。検査に適した時期は、クアトロテストより早く、妊娠11週から可能ですが、陽性であった場合のその後の精密検査等を考慮すると、やはり妊娠17週までには済ませることが望ましいでしょう。検査結果が陰性であれば何ら問題は無いのですが、万が一陽性であった場合、その後の対応をどうすべきか、実施前に担当医師と相談のうえしっかりと考えをまとめておく必要があります。費用は自費で税込み132,000円です。

※2024年6月1日~2025年3月31日の間は休止いたします。

イメージ図 NIPT(新型出生前検査) 
羊水染色体検査

羊水中には、胎児表面から剥がれ落ちた細胞がたくさん混じっています。ですから、羊水を採取してその中の胎児由来の細胞を取り出せば、胎児の染色体を直接調べることができるわけです。細胞内DNA量をコンピュータ解析にかけるNIPTと違い、染色体の数と形を直接観察するので、一定量の細胞が採取できればその精度は100%であり、この検査が染色体異常の確定診断となります。方法としては、母親のお腹から子宮内に注射針を穿刺し、羊水を20mlほど採取します。対象となる疾患は、ダウン症、13トリソミー、18トリソミー、ターナー症候群、クラインフェルター症候群、染色体転座などです。結果に要する期間は14日で、万が一染色体異常が認められた場合、その後の治療方針の相談期間も考慮に入れると、妊娠16週から遅くとも18週までには済ませておく必要があります。胎盤付着部位によっては穿刺できる箇所が見つからず、検査ができないこともありますのでご了承ください。費用は自費で 7,7000円です。

イメージ図 羊水染色体検査 
NT(Nuchal Translucency)

NT(エヌ・ティー)とは妊娠初期の超音波検査で胎児の後頚部(うなじの辺り)にみられる浮腫を指します。軽度であれば正常でも認めることはありますが、目立つものはダウン症や13トリソミー、18トリソミーといった染色体異常で多く発生することが知られています。NT測定は特殊な検査ではなく、その異常は一般産科外来で偶然発見されるのですが、正しく評価できる時期は妊娠11週から13週6日までと短く、胎児の向きや位置によって正確に測定できない場合もあります。NTの厚みは35mmが一応の基準値とされています。35mm以下での染色体異常の発生率は0.3%と低いものの、35~44mmでは21%と上昇し、厚みが増えるごとに異常発生率はさらに高くなっていくことが報告されています。大切なことは、NT測定値は染色体異常を疑うひとつの指標に過ぎず、35mm以下であっても異常を伴う場合もあるし、またそれ以上であってもまったく正常であることも多いということです。ですから、たとえNT肥厚だけが単独で認められたとしても、慌てて予断を下すことなく、診断確定のための羊水検査を行うなど慎重を期す必要があります。

イメージ図 NT(Nuchal Translucency)